【嫉 1】




「―――ッ、離して下さい・・っ・・」

己の腕に伸ばされた掌を、爪を立てながら剥がしにかかる。
この数日で、もう何度この攻防戦をしたか知れない。
攻防戦の度に爪を立てつづけた彼の掌は相当に痛んでいるだろうに、趙雲はそれさえも愉しむかのように、腕を掴んだ掌に更に力を込めてきた。

「くくくっ・・、いいねぇ・・その嫌悪感たっぷりの表情・・」

云いながら、もう片方の手が隙間を縫って己の顎に伸ばされ、捉われる。

「・・痛・・ッ、は・・なせっ・・」

抵抗は、掴まれた腕に増した痛みで無駄に終わり。
顎を捕らえた指先に力が込められ、強引に上を向かされる。
振り払おうと伸ばした腕は、けれど、趙雲の腕を払うことはなく。
腹部に当てられた拳の衝撃と共に、陸遜の躯は掴まれた顎を残して、床に崩れた。

「大人しくしてない、アンタがいけないんだぞ」

趙雲の甘い囁きが、霞がかっていく意識の中に降り注ぎ。
軽い音を立てて床に落ちた、趙雲のマスクがほんの僅かに視界を過ぎる。

「・・ぃ・・や、・・・・だ・・」

深い場所で警鐘が鳴り響く中、意識はそこで、儚く途切れた。