一度目は、自分の寝台で。
二度目は、月夜に照らされながら、湖の畔で。
そして、三度目は――――・・
【嫉 2】
"・・―――陸遜・・"
朦朧とした意識の中で、けだるく紡がれる、ただ一人の声を聞く。
分かるのは、天井にある僅かな灯りと、それに僅かに重なるようにして自分に覆いかぶさってくる、朧な男の姿だけ。
その他は、まるで霞懸かった山中にでも放り込まれたかのように、何があるのかさえ、わからない。
「・・ど、こ・・」
ゆっくりと、言葉を紡ぐ。
声が震えるのは、喉に甘い痺れがあるから。
その甘い痺れは、組み敷いている人物が、自分の意識が無いうちに、何らかの怪しげな薬を使ったから・・だろう。
冴えてくる意識とは裏腹に、躯はピクリとも自由に動かない。
恐怖はない。
けれど、迫ってくる程に鮮明になるその顔を見た瞬間に、陸遜は今すぐにでも意識を失ってしまいたくなった。
「全然目ぇ覚まさないからさぁ、どっか変なとこヤっちゃったかと思ったよ」
そういいながら更に間を詰めてくる、マスクを外した趙雲の顔。
美麗なその顔立ちが、ギリギリまで迫り、そして止まる。
「口、開けな」