俺は甘寧、字を興覇という。
過日の戦において、現在の我が主でもある黄祖様に拾われた、元は賤しき身の上の海賊だ。
そんな自分に、共に大地を生きようと言って下さった我が君は、とても素晴らしい方だ。

ただ一つを・・・・否、二つを除いては。





【甘寧たんの災難 其の壱】






「・・・、元に戻してください」

「・・やだっ」

「・・元に・・」

これで何度目の押し問答だろうか・・。
玉座に君主たるべく構えつつ、やだやだと駄々を捏ねる我が君を、下げた頭からちらりと覗き見ながら、ふとその数を数えてみる。
ひぃふうみぃ・・よー、いつ、むー・・・・・・、やめよう。
数えるだけ時間の無駄というものだ。
というよりは、数え始めたらキリがない。

ズキズキと痛み出す頭を軽く揉みしだきつつ、再度、我が君こと黄祖様に嘆願するべく、頭をわずかに地へと下げる。

「・・黄祖様」


さわ・・

僅かな間をおいて衣擦れの音がこちらへと近づいてくる。
ようやく観念していただけたか・・そう思い、ほっとした表情で顔をあげた先に、甘寧は見てはならぬ物を見て・・しまった。

「じゃあ、これ・・穿いてくれる?」

嬉々とした声とは裏腹に、目の前を二度三度と往復していく禍々しい"それ"と、"それ"一丁な我が君が一人。



「・・・。 短い間ですがお世話になりました。」


甘寧は両の掌をちょんと前に突き出して深々と頭を下げると、ちょちょぎれる涙を風に零しながら、その部屋を猛ダッシュで後にした。















あれさえなければっ・・・あれさえなければっ・・!!

「素晴らしいお方なのに・・っ・・」


目を閉じれば鮮やかに蘇る、"それ"一丁で爽やかに微笑む我が君。
更に思い返せば、風呂からでたら"それ"ひとつしか着替えが用意されていなかったとある日や、"それ"を片手に四六時中追いかけっこをする羽目となった別のとある日。

爆走の末に辿り着いた自室で、走馬灯のように巡りめぐった壮絶な数日の記憶と共に、甘寧はがっくりと項垂れた。

「・・・ほんとに、あの趣味さえなければっ・・・」


世の中は甘くない。
けれど、変なところで甘い・・というかおかしい。

もわもわと湧いて出たその他諸々の悪夢の光景の数々を、頭を左右に振りながら打ち消しつつ、けれど、それ以上に頭を悩ませる嫌な現実に、思わず窓辺から身を乗り出して、少し遠くなってしまった海を眺める。
窓辺から入る潮の混じった冷たい風が、髪が掬い、頭に生えた"それ"へと当たり、言いようのない違和感を否が応でも教えてくれる。

「・・、うっ・・」

鏡の前へと重たい足を進めれば、頭部の髪の隙間に覗く、動物の毛並み。
ついでに言えば、腰下あたりにもすらりと長い、動物の毛が生えている。

いうなれば猫、否、言わなくてもどう見ても、この耳と尻尾は猫。

髪の毛と同系色のそれらは、己の心が激しく沈んでいるせいか、どちらも鏡の中で、へにょっ・・と垂れ下がっていた。










遊び過ぎた気がしますが・・、たまにはこんなのもいいんじゃないかと・・(自分に言い聞かす)。
ひとまずの、猫企画第一弾のアホネタの方です。
素敵なひと時をご一緒できました御三方様に捧げまする。(・・といいつつ完結してません。小出しになってしまいまして候;)
さて、並行させてアダルトもがんばりまする。目指せ、破廉恥リアルエロ描写!!(マテ)